Microsoft MVP について
Microsoft MVP (Most Valuable Professional) 制度とは、Microsoft 社が、社外の人を「MVP」として表彰する制度です。
「Thank you Award」とも呼ばれ、マイクロソフト製品などに対する深い専門知識を待ち、かつ、それを広く(登壇や記事執筆などで)広めてくれている人たちを表彰する制度です。
公式サイト: mvp.microsoft.com
何故このページを作ったか
よく Microsoft MVP の人が Microsoft の社員だと誤解されているところを目撃したり、
MVP って何? なったら何が嬉しいの? など聞かれたりするので、作りました。
公式サイトもあるのですが、ところどころ英語のままだったり、欲しい情報が欠けたりしているので、個人的に勝手に作りました
目次
Microsoft MVP とは
- Microsoft MVP に認定されるメリットって何?
- どんな人が MVP に選ばれるの?
- 審査ってどんな感じなの?
- アワードカテゴリー (受賞カテゴリ) って?
- 日本の Microsoft MVP の人たちを見る
日本の MVP の人たちにインタビュー
Microsoft MVP に認定されるメリットって何?
- Microsoft Visual Studio 最上位のサブスクリプション(Microsoft Azure を月数万円分利用可能なサブスクリプションなども含む)と O365 E3 サブスクリプション付与。
- また、これに加え、 Azure カテゴリでの受賞だとさらに Microsoft Azure の利用額の増額や、Office カテゴリだと O365 E5 にアップグレードなど、カテゴリによって若干ベネフィットに違いがあります
- 年に一度 MVP Global Summit という、マイクロソフト社員にすら秘密である NDA 情報がシェアされまくる 3 日間の技術イベントがアメリカのマイクロソフト本社にて開催され、これに現地もしくはオンラインで参加ができる。(2023年4月現在)
- NDA な情報が流れる MVP メーリングリストに参加
- 「Microsoft MVP」という official ロゴ(バナー)を自サイトや名刺に使える。個人的にこれめっちゃカッコいいしうらやましい
- カッコいい MVP トロフィーが届いて、毎年、そのトロフィーに飾るリングが届く
- クールな Credly デジタルバッジ が貰える
- MVP 受賞者には Microsoft の窓口となる Microsoft 社員「Community Program Manager (CPM) 」が割り当てられ、個別の活動を元にさらなる活動機会のオファーや限定イベントへの招待、他の MVP や社員とのネットワーキングの機会の案内、また製品チームをはじめとした米国の Microsoft 本社とのコミュニケーションのサポートが受けられる
(↑ MVP 鈴木 孝明さんより画像提供)
また、Infragistics さん など、MVP に製品を無料で使わせてくれる特典を配布をしている会社さんもあったりします。
どんな人が MVP に選ばれるの?
何かの分野で技術エキスパート
&& その知識を皆に共有している
の両方を満たしている人が選ばれます。
ただ単に何かに詳しいだけではなく、その知識を周りにシェアし、技術の発展に貢献している人が MVP として表彰されます。
- 例1:私は Visual Studio Code の大ファンです。VSCode はオープンソースで開発されており、またユーザーもかなり多いので、毎週のようにアップデートがありますし、ユーザーによって開発されている素敵な拡張機能もかなりの種類があります。私はそれらのアップデートを日々追っており、それらを 分かりやすく日本語で技術ブログにまとめ、『今週の VSCode アップデートまとめ』や『おすすめプラグイン集』など、高い頻度で発信 しています。また、VSCode 製品自体にも GitHub で Pull Request を出してマージされたり、気になる挙動があったら issue を投げたり 、コントリビュートをしています。
- 例2:僕は Azure (Microsoft のクラウドサービス) を使ったアプリ開発が得意です。その辺のノウハウを、 技術イベントでの登壇(スライドは公開) や 技術ブログ執筆 を通して開発者コミュニティに熱心にシェアしています。 デモアプリのコードは全て GitHub で公開 しています
公式サイトでの海外の MVP の紹介
公式サイト では、次の 5項目が取り上げられています。
OSS プロジェクトへのコントリビュート
- 製品への Pull Request や、OSS プロジェクトのオーナーなど
- スイスの MS MVP である Daniel Marbach さんは、Machine.Specifications, Appccelerate、そしてNinject といった複数の OSS プロジェクトを有しており、これらのプロジェクトは 10万以上ダウンロードされています。また、GitHub では 1,500 以上のコントリビュートを成し遂げています。
登壇活動
- 技術コミュニティでセッションをしたり、技術コミュニティや勉強会を運営したり
- イギリスの MS MVP である Jen Stirrup さんは、ヨーロッパやイギリスで SQL サーバー コミュニティや Women in Technology イベントを統括しており、現役の SQLPassion アワードも受賞しています。ヨーロッパやイギリスで開催される SQLPassや、SQLBIts、SQLSaturday イベントなどの数多くのカンファレンスに登壇し、SQLSaturday エディンバラの総統括者として、Hertfordshire User Group for SQL Server (HUGGS) も運営しています。過去には、10 のヨーロッパのユーザーグループが集うカンファレンスにて、1,000 人以上に対して登壇したこともあります。
他のユーザーを手助けする
- 技術フォーラムでの、他のユーザーからの質問への回答など
- ブラジルの MS MVP である Vinicius Mozart さんの MSDN/TechNet での総回答数は 2,546件、うち 728 件が役に立つ回答に選ばれ、また 4,003 件の返信がありました。また、彼は昨年 185 件以上の回答と 406 件の投稿をし、5 万以上の閲覧を得ています。Vinicius は現在すべての MSDN/TechNet コントリビューションに対して、トップ 0.144% に位置しています。
コンテンツ作成
- 技術ブログ執筆や本の執筆
- 日本の(!) MVP である さくしまたかえさんは、Windows に関する書籍をいくつか出版しており、他の MVP と共著された最近の書籍に関しては 1 万部以上を売り上げています。さくしまさんはご自身のブログに 10 年以上オリジナルの記事を投稿しており、これまで執筆した記事の総数は 2,525 件にものぼり、その閲覧数は現時点で 1,927 万 6,477 ビューを記録しています。 また昨年投稿した 30 件のブログ記事の閲覧数は 284 万ビューにのぼっています。
フィードバックの提供
- 製品チームへのフィードバック提供
- アメリカの MVP である Oren Novotny さんは、.NET や UWP、 Visual Studio、Azure、NuGet といった多くのマイクロソフト製品やテクノロジーに長年に渡って価値あるフィードバックを提供している Windows Development MVP です。彼のフィードバックは多くのマイクロソフト製品に取り入れられており、製品チームも彼のフィードバックに非常に価値を見出しています。
- 製品チームからのコメント:「Oren は素晴らしく、彼のブログでは私たちが提供する製品仕様やドキュメントよりも、より詳細な情報が提供されており、それが彼に正しい質問をしたり、とある「なぜ」に対して、なぜそのように動作するのか、または(より一般的に)そうあるべきなのに何故そうしないのか、私たちに説明を強いる結果となっています。彼が提供するフィードバックは非常に質が高く、私たちにとって、とても重要です。」- Immo Landwerth, Senior PM
審査ってどんな感じなの?
- 申請時点から過去 1 年間(2019年4月に申請した場合、2018年4月から2019年3月)の活動内容が審査対象になる
- 日本マイクロソフトの担当チームに加え、アメリカのマイクロソフト本社、また世界中のマイクロソフトの担当チームによって行われる
- 1 年間の活動リストを見て、インパクトなどを総合的に加味し、授与の是非が決定される
- わりと厳しい。(なので現在 MVP の人たちホント凄いと思うし尊敬しています)
- もともとは自薦/他薦でのノミネーション(審査申込み)だったのですが、2019年1月現在 審査申し込みページを見たら、マイクロソフト社員もしくは MVP の人からの推薦が無いと審査プロセスに進めないようです。なので「我こそは」と思う方は、
- MVP プログラムの本社チーム MVP Global Administrator 宛てに英語でメールを送る:
mvpga(あっと)microsoft.com
- 勉強会に参加して、そこにいる MVP の人や Microsoft 社員の人に「MVP興味あるのですが」と話してみる
- MVP プログラムの本社チーム MVP Global Administrator 宛てに英語でメールを送る:
アワードカテゴリー (受賞カテゴリ) って?
「僕 MVP なんだ!」って言うと「受賞カテゴリーは?」と聞かれます。
カテゴリーについては 公式サイトに詳細が詳しく載っています が、こちらにも 簡略版を 載せておきます。(2024年6月時点)
とくにコントリビューションエリアについては、ここに載せきれないくらい大量にあるので、興味ある方は必ず公式サイトをご覧ください。
# | カテゴリー名 | コントリビューションエリア |
---|---|---|
1 | AI Platform | Azure AI Services, Azure AI Studio, Azure Machine Learning Studio, Responsible AI with Azure |
2 | Business Applications | AI ERP, Business Central, Copilot Studio, Customer Experience, Customer Service, Power Apps, Power Automate, Power Pages |
3 | Cloud and Datacenter Management | Datacenter Management (Group Policy, System Center), Enterprise and Platform Security, High Availability, Hyper-V, Linux on Hyper-V, On-premises and Hybrid AKS, Container Management, On-Premises Networking, On-Premises Storage, Windows Server |
4 | Data Platform | Analysis Services, Azure Arc (Arc SQL Server, Arc SQL MI), Azure Cosmos DB, Azure Data Engineering & Data Science, Azure Data Lake, Azure Database for MySQL, Azure Database for PostgreSQL, Azure SQL (Database, Pools, Serverless, Hyperscale, Managed Instance, Virtual Machines), Azure Synapse Analytics, Data Integration, Database Development & DevOps, Microsoft Fabric, Microsoft Purview, Paginated Operational Reports (RDL), Power BI, Real-Time Analytics, SQL Server (on Windows, Linux, Containers), SQL Server ML Services, Tools & Connectivity |
5 | Developer Technologies | .NET, C++, Developer Security, Developer Tools, DevOps, Java, Python, Web Development |
6 | Internet of Things | Azure Edge Devices, Azure IoT Services & Development |
7 | M365 | Access, Excel, Exchange, Loop, M365 Copilot, M365 Development, Mesh, Microsoft 365, Microsoft advanced content management and experiences, Microsoft Graph, Microsoft Stream, Microsoft Teams, Microsoft Viva, OneDrive, OneNote, Outlook, Planner, PowerPoint, SharePoint, Visio, Word |
8 | Microsoft Azure | Azure Compute Infrastructure, Azure HPC & AI Infrastructure, Azure Hybrid & Migration, Azure Infrastructure as Code, Azure Integration PaaS, Azure Management, Azure Network Connectivity, Azure Networking Infrastructure & Security, Azure Patterns & Practices, Azure Specialized Workloads, Azure Storage - Block & File Storage, Azure Storage - Object Storage & Data Management, Cloud Native, PowerShell |
9 | Mixed Reality | D365 Mixed Reality, MR Design, MR Development |
10 | Security | Cloud Security, Identity & Access, Microsoft Intune, Microsoft Purview Information Protection, Security AI, SIEM & XDR |
11 | Windows Development | Windows Design, Windows Development |
12 | Windows and Devices | Azure Virtual Desktop, Surface, Windows, Windows 365 |
日本の Microsoft MVP の人たちを見る
日本の MVP の人インタビュー
1 人目は、2011 年から 6 年連続 MVP に認定されていた、大田一希さん。
彼は 2017 年に Microsoft に入社したので MVP ではなくなった(社員は MVP になれない)のですが、MVP について詳しいので色々聞いてきました。
01: 大田一希さん (Kazuki Ota)
Twitter: @okazuki / GitHub: @runceel / Blog: かずきのBlog
受賞期間と受賞カテゴリ
Client App Dev (2011/07 - 2014/06), Windows Development (2014/07 - 2017/07)
活動内容
色々な活動の仕方がありますが、私の場合は主に、
- ブログの執筆 (『かずきのBlog』毎月 10万 - 15万 PV)
- サンプルコードの公開 (github.com/runceel/)
- 登壇
を軸に活動していました。
その他には以下のものも MVP の実績として活動していました
- 書籍の執筆
- コミュニティ運営
- OSS プロジェクトのメンテナンス (13万ダウンロードされている NuGet パッケージである ReactivePropertyのオーナー。( GitHub))
MVP になったいきさつ
はじめての参加した勉強会で登壇してる人たちや、当時勉強のために読んでいた書籍の執筆者に Microsoft MVP の人がいて、あこがれのようなものを持ってました。
人にものを教えるのは好きだったので登壇する勇気は当時はなかったのですが ブログを書き始めました。 ある程度ブログが溜まってきて毎月 2万 - 3万 PV (page view) くらいのころに申し込んで 4 回くらい落ちて、その後サンプルコード公開の公開の活動もしていたら審査に合格しました。
現在はブログは毎月 10万 - 15万 PVで、総記事数は 2438、累計PVは 616万 PV となっています。(2019年1月21日現在)
その時々で何に注力されてるかにもよると思いますが、登壇だけや Blog 執筆だけだとなかなかとびぬけてないと受からなかったり、その時の注力してる活動内容とあわないとつらいこともあるので、幅広く活動してるといいと思います。
あと、Microsoft 社員は Microsoft MVP にはなれないので日本マイクロソフトに入社した 2017/02 で MVP ではなくなりました。Microsoft MVP Global Summit のような Microsoft MVP にならないと受けれない特典などもあるので、日本マイクロソフトを退職することがあれば、また Microsoft MVP にチャレンジしてみたいなと思ってます。
MVP になったら何が変わりましたか
MVP ということで登壇機会や書籍の執筆機会が増えました。 また、Microsoft MVP の特典として Visual Studio Subscription の最上位エディションが使えるので Visual Studio のコミュニティー版では利用できない機能を使ったり Microsoft Azure も開発用途で毎月 15000 円程度使えるので Azure の各種機能を試したりといったこともできるので、MVP になる前よりも気軽に Microsoft 系の技術の情報発信が行えるようになりました。
02: 鈴木 孝明(Takaaki Suzuki)
2 人目は、Visual Studio でのライブコーディングなどが神がかっている、鈴木さんです。
Twitter: @xin9le / GitHub: @xin9le / Blog: xin9le.net
受賞期間
2012/07 - 現在
カテゴリー
- Visual C# (2012/07 - 2015/06)
- .NET (2015/07 - 2016/06)
- Visual Studio and Development Technologies (2016/07 - 2018/06)
- Developer Technologies (2018/07 - 現在)
活動内容
- Blog 執筆
- サンプルコード作成
- ライブラリ / ツール作成
- 勉強会 / イベント登壇
- OSS へのコントリビュート
私が MVP になったときのいきさつ
大学卒業後、新卒で入社した企業のプログラミング研修担当が C# MVP の小島さん (@Fujiwo) でした。当時の研修で教わったのは C# ではなく C++ でしたが、半年程度あった研修の最終日に「C++ だとこう書いてきたけど C# ならこんなエレガントに書ける」という言葉を聞き、C# にとても興味を持ちました。小島さんが Microsoft から C# のカテゴリーで表彰を受けている凄腕のエンジニアであることも研修期間中から知っていたので、長い研修を受ける中で感謝と尊敬の気持ちが強くなっていたこともあり MVP Award に強い憧れを持っていました。
それから数年独学で C# を学ぶ中で勉強会にも参加するようになり、当時特に強く興味/関心のあった以下のプログラミング手法について学んだ内容を Blog で連載記事として投稿したり、勉強会を主催して登壇したりしました。
その結果として MVP Award への申請を 1 発でパスし、これまで 7 期連続で受賞することができています。
私がこれらの活動を積極的開始したのが 2011 年 4 月だったのですが、2011 年 3 月に発生した東日本大震災のときにエンジニアとして何も貢献できなかった無力さを感じたことが最も大きいです。当時は Windows デスクトップアプリの開発業務がメインで Web / クラウドのプログラミングが一切できませんでした。その悔しさから自分のエンジニアとしての力を伸ばしたいという気持ちが一気に強くなり、世の中の優れたエンジニアの方々とたくさん会って話をするようになりました。そういった経緯で勉強会への登壇を含む積極的なアウトプットをするようになり、それが結果として MVP Award の受賞に繋がったのだと思います。
MVP になったら何が変わったか
勉強会/イベントなどに招待されたり、登壇の依頼が多く来るようになりました。もちろん登壇となると準備は大変ですが、それ以上にその準備が自分の勉強にもなるので大変ありがたいことです。また受賞特典のひとつである MSDN Subscription のおかげで Microsoft 製品のほとんどを無料で使うことができるため、自習をよりやりやすくなりました。転職活動時にも MVP Award ホルダーであることで声を掛けていただける機会が増えるなど、あらゆる面で正のループが回っているように感じます。
プルリクお待ちしています
このページは GitHub Pages で作っているので、 index.md が変更されたらそのままサイトに反映されます。
現役 MVP の方からの Pull Request お待ちしております!!(私自身が MVP 経験したこと無いから実際に MVP の人からのお声が大切)
もしくは MVP ではないかたからの「この情報も欲しい」「これが分かりにくい」などの issue もお待ちしております。